牧野友季さん
- 仲間
- つながり
- 起業
【起業した学生を取材!】自己表現をあきらめない世界を実現したい 牧野友季さん
入学した経緯を教えてください。
iUに入学するまで、たくさんのことがありました。
元々全日制高校に通っていて、当時は人と違うことが受け入れられなくて周りに合わせようと一生懸命になっていました。
合わせようと頑張ってみましたが、そう上手くは行かなくて、段々辛くなってきて学校にも行く気になれなくて。
高校1年生の時まで2歳上の姉と一緒に登校していたんですけど、姉が卒業してしまったこともあって高2の冬くらいから高校に行けなくなっちゃいました。
高2までの単位が取れていたのもあって、高卒認定を受けて大学に行くことにしました。
理系の研究者になることが小さいころからの夢だったので、物理や機械工学が学べるような大学を受験して合格しました。一回入学したけど、そこも20日くらいで行かなくなってしまって。
結局、自分が人と違うことを受け入れられていなかったんです。大学に入っても本当に細なことが気になって仕方ありませんでした。
出身の高校を聞かれても、中退しているし「高卒認定なんだよね」って言うのも当時はなんだか恥ずかしくって。結局大学に行くよりも高校を卒業したかったという思いがありました。
結局大学は1年生の前期で辞めて、地元に帰ってどうしようか考えた時に、家の近くにある定時制の夜間高校に行くことに決めました。
ドラマなんかの影響で夜間高校は激しい男の子がたくさんいるような場所だと思っていたんですが、実際は全然小学校に通えなかった子や家庭の事情で昼間の学校に進学しなかった人、結婚している年上の人、子育てをしている人、いろんな人がいると知って私でも行けるかなって思って。
結局、その学校に2年半通って高卒の資格を取りました。そこで初めて、人と違うことって恥ずかしくないし、できない自分を否定されることも無いし、人に合わせる必要は無いと友達や先生に言われて自分に自信を持てたし、自分のことを受け入れられるようになりました。
この頃、大学に行くか、就職をするか悩んでいました。医療系の仕事をしたいと思っていたので医療系大学を志望したんですが、まだ当時は合理的配慮が進んでいない時代だったので、「障がいがあって読み書きが出来ないと入学後苦労するから、違う道を探してみて」と言われてしまい、大学を断念して働く道を選びました。
障がいのある人が働く作業所で、作業をしている中で自分の本当にやりたいことってなんだろう、ずっとこれで良いのかなって悩みはじめてチャレンジしてみましたが、それも難しくて。
このままだと就職は無理なんだ、だったら自分が働く場所は自分で作る以外ないんだって思いました。
でも、個人事業主になるとか、会社を作るとか頭の中ではなんとなく分かるんですが、何から始めて何をしたらいいのか分からなくて。経営に全然興味がなかったんです(笑)
マーケティングについて調べてみてもさっぱりピンとこない。自分一人じゃ出来ないと思って、人とやれることはないか考えた時に大学へ進学するという選択肢が浮かび、東京で起業ができる学校を探すことにしました。
そんな中でiUを見つけました。学生全員起業を謳っているんだからやる気があれば起業できるだろうと思ったのと、東京に行けば年齢や考え方、価値観、いろんなことが自分と違う人しかいないだろうって感覚があったんです。
起業に結びつかなくても、バラバラだからこそ得られるものがあると思うし、そういう環境の中で学びたいと願ってiUに決めました。
iU入学後、ご自身に変化はありましたか?
今までは何でも自分でやらなきゃいけないっていう感覚が良くも悪くもありましたが、それがなくなりました。
iUに入学した最初は同級生よりも年上だし、障がいがあることを気にして、周りを頼ることに抵抗がありました。普通にお願いすれば快く手伝ってもらえるって分かっていても、甘えてるって思われるのも人の時間を奪ってしまうのも嫌で。でも一人でやるのには限界があって、生活も勉強もみんながスラスラ出来てることが自分は出来ないと思って落ち込んじゃう時がありました。
iUに入学するまでは、自分でなんでもできないと受け入れてもらえない、迷惑をかけない障がい者であることを求められている環境にいたので、多少無理してでもイエスマンでいないといけないと思っていたんですけど、そのことを友達に打ち明けた時に「それをiUで求められたことがあるの?」と聞かれてしまって。冷静になって考えてみたら「都合の良い人間であれ」と言われたことがないことに気が付きました。
夜間高校で自分に自信を持てたはずだったのに、いつの間にかまた壁を作っていたんです。
それからは、本当の全ての自分を出し続けて鬱陶しがられたらその時はその時だと思うことで、思い切って甘えられるようになりました。
起業した会社について教えてください
『自己表現をあきらめない世界を実現する』というビジョンを掲げて、障がい者の日常に選択肢を増やしたいって思いがあって会社を立ち上げました。
日常生活って結構自分を表現する機会だし、自分の意思がでるところだと思っていて。
例えば、洋服はみんな好きな色や形、雰囲気の服を着るじゃないですか。服に興味がない人でも何かあるから無地の白Tシャツを着ていると思うんです。好きな人は好きなことを、興味ない人は興味がないことを表現しているみたいな。
でも、身体に障がいがあるとどうしてもそうはいかない。サイズ感や形が限られていて消去法で選ぶことになってしまう。
私は車いすユーザーなので、長いスカートはタイヤに巻き込まれて履けないし、背中やおしりが痛くない形や着やすい形にしなくちゃいけない。もっとかわいい服を着たいのに、デザインより便利さを優先させなきゃいけなくて諦めることが多かったんです。
選択肢がすごく少ないという現実を変えたくて会社を立ち上げました。
一緒に起業したメンバーについて教えてください
登記上は自分一人なんですが、1年の時のイノベーションプロジェクト(授業)でグループを組んでいたメンバーと一緒に活動をしています。
イノプロで考えていた内容とは全く違うし、授業を受けていた当時は再度このメンバーで集まることになるとは思いませんでした。
やりたいことは、やれるときに挑戦しなきゃと思って2年次にiUアクセラレーションプログラム(起業支援のプログラム)に参加しました。アクセラをやっていくうちにメンターさんから「そろそろ仲間を集めよう」と言われて頭を抱えました。SNSで仲間を見つけるのも自分には合わないし。
そんな時、2年生でクラスがバラバラになった後も、そのイノベーションプロジェクトメンバーから「イノプロでやってたことやらないの?」「やろうよ」と声をかけてくれていたので、皆で集まってお互いの意思を確認して、そのメンバーで活動していくことになりました。
今やっていることはイノプロで考えていた内容とは違うんですが、2024年2月14日に起業しました。特に縁起や記念日を気にするタイプではないんですが、たまたま予定が空いていて縁起の良い日だったからその日にしました。
登記した帰り道にメンバーと、「今日ってバレンタインデーだったんだ!」となったのを覚えています。覚えやすいから良いですよね。
高校生に向けたメッセージをお願いします。
実際何かをやろうとする時に反対する人って意外に身近なところにいます。
私は東京の大学(iU)に行くって決めたけど、「宮崎(地元)の方が良いんじゃない」とか「無理に今の環境を変える必要はないんじゃない」って意見もあったし、「起業もしなくてもいいんじゃないか」と言われることもありました。
自分の中でやりたいことを考えているうちは誰にも反発されないんだけど、言葉にしたら反対意見や反発する人は絶対にいます。その言葉を素直に聞くことも大切だけど、自分が本当にやりたいことや挑戦してみたいことだったら、それをやるしかない。
それを辞めるのも続けるのも決められるのは本当に自分だけです。
続けていれば応援してくれる人とか、味方になってくれる人は必ずいるので、自分がやりたいって思ったことや信じた道があるんだったらそれを貫いて未来を切り拓いて欲しと思います。
もしiUに来ることがあれば、一緒にそういうことができたら嬉しいです。